ジャンパ連結器雑記帳
No.31 やっと陽の目を見たKE93 (1)
  気動車ファンの方には申し訳ないのですがキハ40系(弊HPでは便宜的にキハ40・41・47・48形を総称してこの表現を使わさせて戴きます)と言えばマスプロ的な面白みのない車と思っていましたが,近年はロングシ−ト化,冷房化,ワンマン化等でバラエティ−を増やしているようです。しかしそんなキハ40系ですが,ジャンパ連結器の観点から眺めてみると実はなかなか面白い車なのです。上の写真のキハ40 1000番台は昭和61年から烏山線用として便所の撤去等を行い登場した改造車です。現在では冷房化,ロングシ−ト化,ワンマン化が行われています。この車の1エンドに厳めしいジャンパ連結器が装着されています。これはKE93ジャンパ連結器で,キハ40系とはきってもきれない関係にあります。今回はキハ40系のジャンパ連結器の変遷に焦点を当てて紹介します。
 
  国鉄時代の特急車を除く気動車のジャンパ連結器と言えば,低圧回路としてKE53を2連,放送回路にKE66,ブレ−キ回路にKE67を使用し,冷房車になるとこれにさらに冷房制御回路としてKE53が1個,高圧補助回路としてKE8が加わり,これらが両渡り仕様で配置されるのですからそれはもう大変な有様でした。ジャンパ連結器の観点から観ればKE53栓受けの挿入角度が変わりマイナ−チェンジがあったものの,どの気動車を見ても代わり映えのしないものでした。しかしこの徹底した標準化のおかげでいかなる車種とも混結が出来,毛細血管のようなロ−カル線へも本線筋からの分割急行が運転されて,分岐駅では気動車の分割併合が日常的に見られました。気動車の連結面間距離は500mmで狭い車間に体を入り込ませて,多数のジャンパ線や空気ホ−スをつないだり外したりする作業が如何に大変なものであっかは想像に難くありません。
  昭和50年新幹線博多開業により多分に試作的要素を盛り込んだキハ66・67形が筑豊地区に投入されました。このキハ66・67形は2両1ユニットとして組成され,その車間には他車との混結を考慮しなくて良いことからKE91Aジャンパ連結器が渡され(キハ66形3エンドとキハ67形4エンド間),気動車のジャンパ連結器に新風を吹き込みました。一方,前位は既存車との混結が考えられた為に上述した一般的な冷房気動車と同じジャンパ連結器を配置しましたが,将来に備えてキハ66形及び67形の1エンドにはKE91ジャンパ連結器栓納めを装着出来る様に窪みを設けた上で鉄板で塞いでおくという準備工事を施しました。
 上の写真はエンジン換装工事施工以前のキハ67 7,画面上では見にくいかもしれませんが1位前面に塞ぎ板が確認出来ます。冷房制御用のKE53ジャンパ栓納めは,この塞ぎ板に取り付けられています。
 上の2枚の写真は最近のキハ66 11とキハ67 11の前位連結部廻りを撮したものです。リニュ−アル工事により前位1位は綺麗に塞がれてしまっています。使用されているジャンパ連結器はご覧のとおりで,1位側は冷房制御用のKE53C片栓ジャンパケ−ブルとKE53C栓納め,低圧回路用のKE53Bジャンパ栓受けが2個,高圧補助回路用のKE8ジャンパ栓受け,放送用のKE66片栓ジャンパケ−ブル,スカ−トにブレ−キ制御用KE67ジャンパ栓納め,隠れてしまっていますが胴受け下にKE67ジャンパ栓受けが装着されています。2位側は高圧補助回路用KE8片栓ジャンパケ−ブルとKER11栓納め,低圧回路用KE53Bジャンパ栓受けが2個,さらにその隣に冷房制御用KE53Cジャンパ栓受け,一番端に放送回路用KE66ジャンパ栓納め,腰板部にはKE53ジャンパ栓納めが2個付いており,キハ66にはKE53両栓ケ−ブルが装備されています。
  上の2枚の写真はキハ66と67の前位同士の連結部を撮したものです。左側の写真はキハ66(左)1位とキハ67(右)2位の連結部で,右側の写真はキハ67(左)1位とキハ66(右)2位の連結部です。この写真を撮影した時は冷房使用中だったのですが,冷房関係のKE53CとKE8及びブレ−キ回路のKE67は渡されていません。先の前位連結部廻りを撮した写真にもKE67ケ−ブルが見あたらないことから,キハ66・67形ではKE67は現在使用していないようです。また,運用上分割併合が頻発することから高圧補助回路を含む冷房関係の渡しは使用せずユニット単位で制御していることが伺われます。
  上の写真はキハ66(左)4位とキハ67(右)3位の連結部で,高圧補助回路用のKE8両栓ケ−ブルが渡されています。。キハ67の3位妻板にはKE8用のKER11ジャンパ栓納めが妻板を剔って取り付けられています。
  上の写真はキハ67(左)4位とキハ66(右)3位の連結部でKE91A両栓ケ−ブルが渡されています。キハ66・67形は2両2ユニットとして機能する為,多心ジャンパを使って合理的な渡しが行われています。キハ66の3位妻板にはKE91A用のKER17栓納めがやはり妻板を剔って取り付けられています。
  先に説明させて頂いた前位1位の塞ぎ板は,将来このKER17を取り付けるための窪みを暫定的に隠す為のものでした。
  上の2枚の写真は順番にキハ66の後位車内,キハ67の後位車内を撮したものです。それぞれ3位妻板に在るKER17,KER11栓納め取り付け用の窪みを避ける為に貫通扉がいずれも4位側へ開くようになっていることが判ります。
  キハ40系のジャンパ連結器の話なのになぜキハ66・67形のジャンパ連結器の話をするのか不思議に思う方も居られるかとおもいますが,キハ40系の話をする為には実はキハ66・67形の話から始めなくてはならないのです。次回はいよいよキハ40系へと話を進めます。
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