KE3 ジャンパ連結器



KE3栓受け
昭和33年に登録された電気暖房用ジャンパ連結器で、定格交流1500[V]、1芯と直流100[V]の補助回路2芯が配線されています。電気機関車に搭載されている変圧器,インバ−タ−或いは電動発電機により単相交流1500[V]を発生させて,牽引する客車の電気暖房の電源とします。1500[V]もの高圧を引通すので感電事故や接地事故防止の為様々な工夫が盛り込まれています。





左の写真はKE3栓受けを後ろ側から撮したものです。写真右上隅に見えているのが電暖主回路用(交流1500[V])のケ−ブルで,栓体下に2本出ているケ−ブルが補助回路用(直流100[V])です。
KE3H栓受け
左の写真はKE3シリ−ズの中で最も多く使われていると考えられるKE3H形ジャンパ連結器栓受けです。名前が示すとおり凍結防止のためにヒ−タを内蔵しています。ヒ−タは補助回路用突き当て式接触子のバネ部の凍結防止を図ります。栓受けは交流100[V]で30[W]の
ヒ−タ容量です。





KE3は前から見ても横から見ても,他のジャンパ連結器栓受けとは異なる形をしています。これはすべてが感電防止および接地防止対策に由来する必然的なデザインなのです。蓋正面下部に大きな膨らみがあることが外観上の特徴です。この膨らみは蓋の裏側にある補助接点を動作させるための仕掛けが入っているためです。
この写真はKE3H形栓受けの後ろ側を取ったものです。左右に2本(右側はちょっと見難いです),中央に2本のケ−ブルが在ります。左右の2本は補助回路用のケ−ブルですが,中央の2本はヒ−タ−用のケ−ブルとなります。
この写真もKE3H形栓受けの後ろ側を撮したものですが,中央のヒ−タ−用のケ−ブルが単線2本から2芯ケ−ブルへと改良されています。
KE3HB栓受け
左はKE3Hの改良形のKE3HBジャンパ連結器栓受けです。大きな改良点として栓を装入し易くするために主接触子が固定だったものを若干の揺動を許す設計となっています。また防水対策も強化されています。
栓受け内部
主回路部分は差し込み式接触子(オス)でKE1やKE2と似ていますが、下の黒い絶縁板の両端の6角形の突起が補助回路用の突き当て式接触子となっています。向かって左側が補助回路用、右側が栓蓋の裏にある突起と接触します。
ジャンパ連結器雑記帳No.3 "KE3の謎" でも書きましたが,誤差し込み防止キ−溝は正面から見た状態では270°の位置に在りますが,奥へ進むと30°クランクして300°の位置に曲がっています。下の栓の写真のように装入される栓の誤差仕込み防止キ−は300°の位置に付いています。従って栓を装入する際は反時計回り方向へ30°傾けた状態で差し込み,抵抗を感じたら時計回り方向へ30°回すと正規の位置で固定されます。これも事故防止対策の一つで,ヒ−ター主回路が活きている状態でいきなり栓が抜かれないように一旦反時計回りに30°回すことにより,補助回路接点が離れヒ−タ−主回路が停止します。その後栓を抜くようになっています。栓を装入する際は逆でまず主回路接点がつながり(この時点では主回路は活きていません),30°時計回りに回すことにより補助回路接点がつながり,はじめて主回路を活かすことが出来るようになります。
KE3片栓
KE3片栓ジャンパケ−ブルには電気暖房用電源の定格交流1500[V]のケ−ブル1芯と補助回路用定格直流100[V]のケ−ブル1芯の合計2芯から構成されています。主回路の接触子は差し込み式(メス)となっています。片栓の接触面向かって右下の補助接点には補助回路用の定格直流100[V]が来ています。また左下には栓受けの補助接触子を避けるための窪みが形成されています。一番下部の溝は栓脱落防止用のスプリングを引っ掛けるためのものです。
栓のつくりはKE1やKE2に似ていますが,下部に補助回路用の接触子などが付加されて独特の形状となっています。
誤差仕込み防止キ−はこの写真で見ると60°の位置となりますが,栓受けに装入される際には300°の位置となります。栓受けの誤差仕込み防止キ−溝は270°の位置に掘られているので,30°反時計回りに回した位置で装入し,突き当たったら30°時計回りに回してはじめて正規の装入となります。
KE3栓納め(KE3開放栓受け)
左の写真はKE3栓納めで銘板では”開放セン受”けとなっていますが,私のホ−ムペ−ジでは栓納めという呼称で統一しています。
蓋の表面左下に円形の膨らみがあるのが特徴です。








左の写真はKE3栓納めを裏側から撮影した写真です。栓納めなので主回路の配線はありません。右下から出ている細いケ−ブルは補助回路のものです。
KE3H栓納め
左の写真はKE3栓納めに凍結防止ヒ−タ−を内蔵したKE3H形栓納めです。栓受けはKE3HB形がありますが,栓納めはまさに栓を保持するだけなのでKE3H迄しか設定されていません。
この写真の栓納めは”開放セン受け”ではなく”セン納め”と刻印された銘板を装着しています。
ヒ−タは補助回路用接触子のバネ部分の凍結防止のために装備され,交流50[V]で30[W]容量です。




左の写真はKE3H栓納めの裏側を撮影したものです。太めのケ−ブルと細いケ−ブルが出ているのが判ります。太めのケ−ブルはヒ−タ−電源の2芯ケ−ブルで,細いケ−ブルが補助回路用の1芯ケ−ブルとなります。
栓納め(開放栓受け)内部
写真はKE3栓納め(=開放栓受け)内部の様子です。誤差仕込み防止キ−溝はKE3栓を納めておくだけなので素直にまっすぐに装入出来るように300°の位置にあります。左下の6角形の接点は補助回路用の接触子です。



【電気暖房ツナギ】
上の図は電気機関車のKE3ジャンパ連結器を中心としたツナギ図の概略です。赤線は交流1500[V]の回路で,青線は直流100[V]の補助回路を示します。電気機関車が単機でいる場合,(すなわち片栓は開放栓受け収納されていて,栓受けの蓋は確実に閉じている場合)片栓HeJCP1に入った補助回路は開放栓受けHeJCOR1の補助回路接点と接触します。次いでHeJCR1に入った補助回路はHeJCC1栓受け蓋が完全に閉じていることにより,二つの補助回路接点が短絡されます。次いでHeJCR2に入った補助回路はHeJCC2が完全に閉じていることにより,二つの補助回路接点が短絡されます。次いでHeJCOR2開放栓受けに入った補助回路はHEJCP2片栓が装入されていることで再び電気機関車へ戻り閉回路が形成されます。客車を連結した場合には,機関車先頭側の片栓が栓納めに装入されており,栓受けの蓋が確実に閉まっていること。電気機関車連結面と客車連結面および客車間の間に双方の片栓がしっかりと引き通されていること。各栓納めの蓋がしっかりと閉じていること。最後尾の客車の後部の片栓が栓納めに装入されており,栓受けの蓋がしっかりと閉じていることにより補助回路および主回路が引き通されたことになる。
【電気暖房の運転】
電気暖房回路は様々な改良がなされてきて,機関車毎にツナギが変わっていたり操作が変わっていることが考えられるが一例としてその操作を記してみたい。
@電気暖房用しゃ断器を投入する。
A列車暖房車側表示灯切換スイッチSiLpSを前位或いは後位に切換る。(運転士の信号との誤認を防ぐために切換られるようになって  いて,通常1位と4位にある電気暖房車側表示灯の前側を点けるのか後ろ側を点けるのかを選択する。すなわち1個の表示灯の前後  を同時に点灯することはできない)
B列車暖房切換スイッチHeCgsで暖房の強弱を設定する。(主変圧器の暖房巻線にタップが設けられていて出力電圧を切換えることが  出来る。電動発電機の場合には調圧器で切換える。機関車により異なるが強が電圧100%,中が電圧90〜70%くらい,弱が    80〜50%くらいに設定されているようだ。
Cこの時点では列車暖房主回路には通電はされておらず列車暖房車側表示灯SiLpが点灯している状態である。従ってジャンパ連結器 の接続/開放作業が出来る。
D列車暖房の主回路に通電をするためには列車暖房投入スイッチHeSを投入する。すると列車暖房車側表示灯が消灯し,ジャンパ連 結器の操作が禁止されていることが示される。
E列車暖房通電中に過電流が流れると列車暖房過電流検出器HeOCDが作動して主回路を切る。
F列車暖房通電中に回路に接地事故が起こると列車暖房回路接地検出器HeGDが作動して主回路を切る。



写真左は列車暖房切換スイッチHeCgs
写真中は列車暖房投入スイッチHeS
写真右はHeOCDとHeGDの表示灯
【客車側】
電気暖房を装備した客車は原番号+2000とされて,非電気暖房車と区別している。どの向きに連結しても電気暖房回路を引き通せるように妻面向かって左に片栓および栓納めを装備し,妻面向かって右に栓受けを装備している。客車の床下には変圧器が吊り下げられており,機関車から並列送電された交流1500[V]を交流200[V]へ降圧して車内のヒ−タに給電される。
客車には電気暖房用の配電盤が装備されヒ−タの入り切りおよび全部稼働と半分稼働が選択出来るようになっている。
さらに緩急車の車掌室には電気暖房に何らかの異常があった場合に直ちに機関車からの送電を止めるための引きスイッチが装備されている。これは機関車から最後尾客車迄引き通されている電気暖房補助回路(直流100[V])を切断するものです。旧型客車との混結が考慮されていた12系客車(電気暖房の引通しのみで,自車の暖房はスハフのディ−ゼル発電機による)の車掌室にもこの非常スイッチが装備されている。



写真左は電気暖房用配電盤の外観
写真右はスハフ12の車掌室にある電気暖房非常スイッチで,従来客車の緩急車の車掌室にも同等な設備がある。
写真はKE3栓納め(=開放栓受け)の補助回路用の接触子です。
栓納めに栓が装入されておらず,蓋が閉まっている場合は蓋と補助回路接触子が接触しないように蓋の裏側の当該部位に接触子を逃げる窪みがあります。栓納めの蓋を正面から見た場合の左下にある円形の出っ張りは,この窪みを形成するための出っ張りです。更に窪みには短絡を防ぐ為に絶縁ゴムが装着されています。
栓が栓納めに装入されると補助回路用接触子は栓の接触子(固定)により押され接触子の内部に仕込まれたバネの反力により,その接触が確実なものとなるようになっています。またこの接触子は2段階作用となっています。まず接触子が栓の接触子と接触します。この段階ではまだ補助回路はつながっていません。更に接触子が押し込まれると内部に在るスイッチがつながり初めて補助回路がつながるようになっています。これは補助接点の短絡事故や接点の焼損を防ぐ為の対策のようです。
写真は栓受け内部の写真で栓受け下部左右に2つの補助回路用接触子があることが判ります。向かって左下はKE3栓を装入した際に接続される接触子です。右下の接触子は蓋が完全に閉じていることを検知する為の接触子です。
国鉄の種々の車両の電気暖房回路のツナギ図を見ると栓受けの蓋が閉じている場合は蓋を介して補助回路が接続されるように描かれています。しかし蓋の裏側には2つの補助回路を短絡させるような仕組みは見当たりません。蓋の裏側には向かって右側に一つの突起が在るだけです。これは一体どういう事でしょうか。ツナギ図とは異なり実際は蓋の裏に設けてある突起により栓受け右下の補助回路接触子が押し込まれます。
すると接触子の裏側にあるスイッチが入り向かって左側の補助回路とつながるようになっています。蓋を閉じることにより栓受け内部で左右の補助回路がつながるわけです。
右下の補助回路用接触子はバネの反力を受けながら押し込むことが出来ます。
左下の補助回路用接触子もバネの反力を受けながら押し込むことが出来ます。



ED71 4
製造当初より主変圧器4次巻線を利用した電暖設備が搭載され,この引通しの為にKE3ジャンパ連結器が開発された。EG灯は後年改良で取り付けられたが取り付け位置は前位両側面であり,他の機関車のように点対称では無かった。
ED75 65
ED75 740
ED75 1033
ED77 1
 ED78 10
EG灯をともして,これから客車との連結作業に入る
 ED79 17
EF70 81 
 EF71 15
EG灯を点灯させて連結のため客車へ近づくEF71
EF80 16 
EG灯は2位および3位に装着されている。
 EF80 21
なぜかEG灯を点灯させて14系を牽くEF80
EF81 132
 
EF57 7 
 
EF58 141 
 
EF62 38
直流機で始めて電暖設備(320[kVA]電動発電機)を搭載して登場した。EG灯は点対象に設置されているが2・3位であるのが要注意。
 EF64 50
EF64 1031
 
オハ12 
 オハ12
12系も旧型客車を混結する時用に電暖の引通線を装備している。
 
 オハ47
 
 スハフ42
 
 スハフ33 2357



EF81 22のEG灯(type A)
EF81 80のEG灯(type B)
EF81 81のEG灯(type C)
EF81 139のEG灯(type D)



[戻る] [サイトマップへ戻る] [メニュ−へ戻る] [ホ−ムへ戻る] [次へ]