ジャンパ連結器雑記帳 | |
No.13 北海道ジャンパ連結器奮戦記 | |
北海道の車のジャンパ連結器を視てきました。本州ではお目にかかれない珍品が勢揃いしていて、とても有意義な取材が出来ました。 最初の写真はキハ56のKE53栓受けを撮したものです。本州のそれと比べると2個のKE53が1ユニットになっており太いパイプが取り付けられていることが判ります。これはエンジンの熱で作った温水を引き廻して栓受けの凍結を防止するための仕掛けです。この温水はジャンパのみならずドアレ−ル等凍結対策が必要な場所にも同時に引き廻されています。 次の写真もやはりKE53栓納め2個が1ユニットになっており温水パイプが引き廻されています。北海道を走る気動車ならではの仕掛けと言えるでしょう。これらの栓受けや栓納めを現場では”ユタンポ”と呼んでいるとのことでした。 次の写真はキハ183のKE8H栓受けの内部を撮したもので、内部にサビが出ているのが判るでしょうか?。Oリングと締め付け腕により防水が強化された最近のジャンパ栓受け内では、ヒ−タ−の作用により栓受け内で結露が生じ、接地事故やサビの発生等思わぬトラブルが生じているとのことでした。対策としては絶縁板(突合わせ式接触子がはえている黒い部分)の表面にさらに絶縁塗料を塗布したり、次の写真の様に水抜き穴を設けたりして対応しています。 この写真は785系のNKE96栓受けですが、写真では判りませんが絶縁塗料(緑色に見える部分)が塗布されており、さらに栓受け下部のヒ−タ−端子用の四角いブロックのさらに下に小さな四角いブロックが見えます。この小さなブロックが水抜き用の穴がある部分です。この栓受けの形状が示す様に本来はヒ−タ−が組み込める物ですが、上述した対策の観点から最近ではヒ−タ−をわざと組み込まないそうです。もちろんこのNKE96にもヒ−タ−は取り付けられていません。特に水抜き穴は大ヒットで、これにより結露接地事故は激減したとのことでした。 次の写真は突合わせ式接触子の実物を撮したものです。写真左側の丸棒部分が接触子部分で、中央の六角形部分には接触子に接触圧を持たせる為のスプリングが組み込まれています。写真右側の部分には栓受けに接触子を固定する為のネジが切られており、その先にはケ−ブルと接続する為の圧着端子が付いています。余談ですが、栓側の接触子は凸型をした丸棒の形状をしており、絶縁板裏側より凸型の肩の部分をストッパ−として挿入し、表側よりCリング等により抜けない様に固定します。 言葉では上手く伝えられませんので、JIS E 4202より抜粋した模式図をお見せします。すなわち栓側の接触子は固定式で、栓受け側の接触子はスプリングにより弾力が持たされています。上述した栓受け側接触子の六角形の内部に結露した水が入り込み凍結すると、スプリングが機能せず、弾力性を持たない接触子に豹変します。凍結している栓受けに栓を挿入し、締め付け腕で固定すると栓側のCリングが外れて、栓側の接触子がへこみ接触不良事故が発生します。前側の運転台より操作して、前側のユニットは動作するが、後ろのユニットが動作せず、今度は後ろ側の運転台より操作すると後ろ側のユニットは正常だが、前側のユニットは動作しない等の時は、まずジャンパの接触を疑うそうです。 |
|
右の写真はNKE96栓を改造して製作したジャンパウォ−マ−と呼ばれるものです。左側には栓受け側より電源を取り込む接触子が2個見えます。中央の2本並んだ緑色の筒は発熱体です。右にはヒュ−ズが見えます。これらが取り付けられている網板の後ろ側にはファンが装着されており、温風を栓受け内部へ吹き付ける様になっています。温風は栓受け内部を暖めてから、上述した栓受け水抜き穴より排出され結露と凍結の双方を一気に防止する優れものです。 最後の写真はジャンパウォ−マ−を背中側より見たもので、中央やや下に緑色のLEDが組み込まれており、正常にウォ−マ−が動作していることを知らせてくれるようになっています。冬季の栓受けの保護の必需品だそうで、部品棚には沢山のジャンパウォ−マ−が冬の到来を待って待機していました。 普段何気なく見ていたジャンパ連結器も、北海道では人知れ ず様々な技術が組み込まれ、多くの社員達の英知により定時運転が確保されていることが判り、とても良い勉強が出来たと思います。 |
|
[その12へ] | [サイトマップへ戻る] | [メニュ−へ戻る] | [ホ−ムへ戻る] | [その14へ] |